その529 感動は心の内に 2022.11.13

2022/11/13

 山を紹介する番組を時々見る。
田中陽希さんの300名山一筆書きは朝ドラの後に続いて見てしまう。
田中さんの番組の良いところはぽつりぽつりと語る彼の言葉が、
登る人の気持ちを多すぎず、少なすぎず、ちょうどのあんばいで表していることであろう。
「やあっ、○○山、会いたかったよう。」
「ちょっとここヤバいですね。」
「今日はやめときましょう。」
といったつぶやきは、良いことも悪いことも、「そうそう、あるある」と共感できる。
 
「百名山秋のスペシャル」とかいう番組を途中から見た。
番組で登る人は何人かいるのだが、一人の芸能人は霧の中を3000メートル級の山を登る。
彼も登山の修練を積んでいると思われる。
登山ガイドと一緒に登るが、落ち着いた足運びである。
ただ、しゃべりが多いのが残念。
収録でなければ彼だってそんなに登りながらしゃべらないであろう。
美しい光景と彼の感動は、多すぎる言葉で薄れてしまった。
「すごい、すごい、やったーっ」と大声で言うよりも、
息を吸って吐きながら「スッゲー」と心の中で感動する方が印象は深い。
 
 この手の番組には、登って登頂で終わるものが多い。
でも本当に大変なのは下りだ。
山頂からヘリで帰ってくるわけではあるまい。
あの苦しかった険しい登り、さらに危険な下りはどうやって切り抜けたのか。
そんなシーンも紹介してほしい。
 
 ある程度の年齢になると、登山用具店では気を使ってくれる。
津野町の山で道に迷ったときにストックを置いてきてしまった。
山の道具屋に行くと、
「町使いですか、お散歩ですか。」と聞かれた。
「いえ、山で使うんです。」ときっぱり。
 
 長年使ったハードシェル(少し硬めの材質のジャケット)が古くなって
雨が降ると水が浸み込むようになった。
店であれこれ探してみた。
春・秋でも暑くならないもの、ある程度の厚みのある材質で、
寒風はさえぎってくれるものがベストだ。
「これ下さい。」とレジに持っていくと、
「雪山対応の商品ですが、大丈夫ですか?」
「ええ、まあ。あまり雪のある時は行きませんが、県境あたりの風の寒さは秋でもつらいので」
「この商品でお間違いないですか。」
「はい、どうぞ、これを下さい。」
店のポイントカードを出すと
「シニアの方ですね。割引があります。シニアの方のシールを張ってよろしいでしょうか。」
シニアシニアと言うな。
シールは張らないでほしい。
カードをピッとやればすぐに年は分かるじゃないか。
と思ったけど言わないでおいた。